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人間の資質 スペックだけが人材の判断材料になるとは限らない
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「エコノミストに任せておくに経済問題は重大過ぎる」「デザインはデザイナーに任せるには課題が大きすぎる」と語られる。それらと同じく「人材問題は人事専門家に任せておくテーマではなくなってきた」らしい。
人材をスペックで表現することがある。海外の一流大学のMBA(経営学修士)をもっているとか、英語のテストが何点とか、ああいう類だ。しかし転職市場の専門家によると「スペックが判断材料になるのは30代までですね。その上の幹部層の市場は違います。もっと大ざっぱというか、勘が働くというか…」と話す。いわば人間力そのものを問うている、と言いたいのだろう。
例えば、デザインを学ぶ学生たちのタイプに変化がある。感性が優先する右脳人間だけが行くところではなく、ビジネスの質をあげるにMBAではなくデザインを勉強したいという傾向が一部に出てきている。
大きな問題の解決に立ち向かうにあたり、経営学ではなくデザインのアプローチが有効ではないかと気づき始めたわけだ。左脳と右脳を一跨ぎした実践的な見方とスキルが希求されている。要は総合力勝負だ。
そして組織も総合力を得ようとする。
今、経営コンサルタント企業がデザイン会社を買収する。経営環境が瞬時に変わる。しかし、幹部がそうした実態をエクセルの細かい数字で頻繁に追いかけるのは無理がある。でも「リアルに分からなかったから失敗した」とは言えない。そこでデータが分かりやすく一目で直感的に理解できるカタチで常時示される工夫が要求される。このタスクをこなすのもデザイン会社の役目である。
実は、冒頭のフレーズはコンサルタント会社のデロイトのグローバル人材トレンド2013のレポートを読みながら思ったことだ。59か国のビジネスリーダー及び人事担当エグゼクティブ1300人以上を対象とした調査結果である。
彼らの関心の上位5つは「次世代リーダーシップ」「人材育成競争」「組織変更の加速」「ビジネスの新たな優先事項に沿った人事改革」「経営陣による人事戦略の変革」だ。地域によって順位に違いはあるが、関心項目にさほど差はない。
数十年もの間、多くの企業は「完璧なリーダー」像があると思い込み、そのモデルを複製しようと努めてきたが、実際そのようなものは存在しないことが分かってきた、とある。
先進国市場の行き詰まりと新興国へのシフト、インパクトあるイノベーションの必要性、日々変わる規制への対応などさまざまな課題に向き合うにあたり、「ユニークな課題はユニークなリーダーを必要する」とリーダーには汎用性がないことを指摘している。
「万能型は世界の何処にもいるらしいが、ここにはいない」と焦りまくる日本で盛んに語られる「グローバル人材」論は、随分と古臭いのだろうか。
個々のリーダー人材の汎用性に疑問を持ちながら、他方で人間の総合力が求められている。そして、「人材が不足している。トレーニングしないとどうにもならない」と眉間に皺を寄せる。
ここで、待てよ、とも思う。人材研修も大切だし、それこそ学校教育からの改革が必要なのは確かだが、これほどに急激な社会的変化のまっただ中で、そもそも新しい状況にあった人材がいないのは当たり前である。だいたい過去においても理想のリーダー像とは幻想にすぎなかったのではないか。
だからこそ、現在、教養や人格の大切さがふたたび説かれる。「総合という名の分野の専門家」はリーダーとしては不十分なのだ。確かに複数の分野を経験することは鳥瞰的状況を把握するに鍵になる。創造的な突破口を見出し自ら歩を前に進めるにはさまざまな経験が役に立つ。だが経験を積み重ねれば教養や人格が向上するとは限らない。
「資質」が問われている。「地頭が良く」「エネルギーがあり」「愛嬌があり人に好かれる」のはもちろん望ましいが、それらを鍛えるものとして教養が位置づけられているのではないか。「資質」を生まれつきの才ととらえたら生きる気力を失う人がほとんどだ。