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大きく変わり始めたブランドの風向き 重要性は新興国に限らず

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

大きく変わり始めたブランドの風向き 重要性は新興国に限らず

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 「これまでインドネシア経済は資源など川上産業が主役でした。一方、最終消費財は外資系が握ってきました。そこに今、インドネシアの企業も入り込もうとしているんですね。ブランド戦略が注目される背景は、こういうことだと思います」

 こう語るのはインドネシア総合研究所の田村紗菜さんだ。インドネシアに限らずASEANの人たちと話すとブランドへの関心が殊のほか高い。その証拠にデザイン事務所をみても建築やインテリアあるいはウェブと並んでブランドデザインコンサルタントを売りにするところが多い。この疑問をぼくは田村さんにぶつけてみたら前述のコメントだった。

 ASEANの他の国々でも若い子達が動画を自ら製作してネットアイドルへの道を目指している。ビジネス側でも従来のマスメディアで韓流スターをプロモーションするより、自国のネットアイドルを盛り上げた方がコストはもちろん、ブランドとしての成功率も高いと考えるようになっている。

 ブランドを巡る風向きが大きく変わってきている。

 デザインを学ぶアジアの留学生がミラノにも多いが、ブランドデザインへの向学心は高い。またビジネススクールが企画するイタリアのブランドツアーはアジアからの参加者に人気だ。高級カーメーカーやファッション企業を実際に訪問し、戦略担当からプレゼンを受け、ビジネススクールの先生が解説を加える。

 ただ、当然のことながら、ブランドの重要性は新興国に限らない。

 先進国においても「ダントツで勝ち抜く」という文脈で盛んに語られるようになった。しかし、留学生たちが「ブランドがなければどうしようもない」という言葉を盛んに口にする姿をみるにつけ、ブランドへの希求の度合が先進国とは違うと感じる。

 そこで、ぼく自身のブランドへの関心推移を思いだしてみた。

 80年代の日本でブランドの洗礼を受けた。アルマーニやルイ・ヴィトンなど欧州ファッションメーカーがもてはやされた時代だ。企業は競って有名ブランドの独占輸入権の獲得やライセンス生産の権利の取得に走り回った。経済は絶好調で、各企業は「品質や機能がよくて当たり前」と付加価値という言葉をこぞって使い出した。

 しかし、ぼく自身がトレンドの渦中にいたとの意識はあまりない。その頃、英国のスポーツカーメーカーと一緒に仕事をして、はじめてブランドを強烈に意識した。設立から30数年がたち創業者も10数年前に亡くなっていた同社が、80年代後半、エンブレムをオリジナルのデザインに戻した。

 「我々は創業者のスピリットを思い返す必要がある。歴史を振り返ってこその新しい一歩だ」との自信溢れる社員の言葉を聞いた瞬間、ブランドの意味を身体で理解した気がした。デザイン的にどちらがスマートかということではなく、どちらが自分たちの思想を伝えているかが大事なのだ、と。

 ブランドの風向きが変わり始めたと思ったのは、21世紀に入った頃だろうか。F1でシューマッハがフェラーリで勝ち続け、彼の年収が他のスポーツ選手のそれを大きく引き離し、しかもチームからの報酬もさることながら、彼個人へのスポンサーフィーが大きな割合を占めることを知った時だ。お金と名声の一極集中化だ。

 同時にアマゾンなどネットでのブランドが短期間に成立する様子をみて、「19世紀から綿綿と続く職人魂」というよくある口上とは別次元のブランドが認知されていく時代になったと感じた。モノでもコトでも普及の範囲と速度が格段に違った世界を前にし、ブランドの位置も変わってきて当たり前である。

 冒頭の話題に戻ろう。

 アジアや中東の企業が歴史ある欧州ブランドを買収する流れがなくなるわけではないが、「そんな無駄金を払うより自分でブランドを作ってしまえ!」と考える人が多くなっていくだろう。ブランドの概念そのものが、これによってさらに大きく変貌していくのは必至だ。

 しかし、だからこそ人肌を感じる歴史あるブランドがより稀少性を発揮するとのパラドックスが生まれるのも確実だ。

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