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伊ファッション界も脱帽する「日本の若い男の子」
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「日本の若い男の子たち、そう、20代のストリート系のカジュアルファッションはミラノのファッションリーダーたちも注目していますよ。世界で一番おしゃれじゃないかって…」と語るのは、ミラノで長くトップファッションブランドと仕事をしている移川みどりさん。
彼女はコレクションの時にショールームの販売員としてイタリア有名ブランドを渡り歩く。世界から集まる一流のセレクトショップや百貨店のバイヤーに最新の情報と商品を提供するのが役割で、今や世界のファッション業界で一番扱いにくいと言われているイタリア人のクライアントからも指名がくる。通常の店舗の販売員の倍額の給料がこの世界の水準だ。
極めてプロフェッショナル性の高い仕事で、ミラノでも合計200人程度である。ここ数年、不景気により人数は確実に減り続けている。それにも拘わらず、移川さんは上位の成績を維持し続けており、毎シーズンさまざまなトップブランドからオファーがくる。
その移川さんが日本のファッションを語る。どうして若い男の子なのだろう。
女の子のファッションは話題にならないのだろうか?
「日本の女の子のファッションは、良くも悪くも世界あるいはイタリアのトレンドセッター達に語られる事はあまりないです」と話す。
女性らしさを体の曲線美に求める多くの国の傾向にそぐわないという。おしゃれ度やかわいい日本の文化はそれなりに認められてもいるが、体型の違いもありファッションスタイルで評価されるには至っていない。
それに比べ、20代の日本人の男の子のストリート系ファッションは見事だと業界人たちが語る。日本の雑誌でもたびたび紹介されるミラノで一番クールなセレクトショップのオーナーも、「日本やミラノコレクションの時期にショールームで彼らを見るたびに、そのコーディネートには脱帽するよ」と語る。
「上から下まで気取りすぎる事なく上手に足し算をしている。洋服と小物との相性とその気使い。新しい物と古い物のバランスの良い取り入れ方はイタリア人の僕たちでもまねできない」と手放しの褒めようだ。
例えば、現在飛躍的に売り上げを伸ばしているブランドの社長もこう話す。
「2014年のメンズ春夏コレクションには4つの国が大きく影響している。イタリアからはその高い職人の技、イギリスからはクラッシックメンズ服には欠かせない高級素材、アメリカからはコンサバのカレッジ系ムード、そして日本からは重ね着、組み合わせの技だ」
相反する色、全く違う素材感、重い素材と軽い素材、新しさと古さ、クラッシックとカジュアルという両極端な性質を上手に足して適当に引く。日本の20代の男性のセンスが世界のファッションシーンにこういうカタチで登場している。
但し、30代以上のクラッシックフォーマル系の日本人男性のファッションには厳しい目を向ける。これらは無関心派と頑張り過ぎ派に分かれ、どちらをとってもファッション人のヒントにならない。
移川さんもこう説明する。
「ビジネスマンのおしゃれは、イタリアの男性に見るべきものがあります。最近カムバックした白、水色のシャツにグレーか濃紺の仕立てのいいジャケット。そして下はチノパンやオーソドックスなジーンズで合わせる。そこが彼らの個性の見せ所ですね。ベルトや靴は、バックルなどでブランドが一目瞭然なんてありえません。あくまでノーロゴです」
ぼくは、日本の若い男性のファッションの話を聞いていて、ひとつ思い出したことがある。フランス料理シェフ・松嶋啓介さんの言葉だ。
「飽食の時代以降の和食は、食材の組み合わせの多様性に強みがあると思います」
日本の製造業は摺合せが得意とされてきたが、和食も組み合わせの多様性を特徴としている。そしてファッションにおいてもコンビネーションの妙が評価されている。日本人のきめ細かさが強みというのは、微妙な合わせに一歩秀でるということなのではないか。
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