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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(7-6) 支援体制きっちり

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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(7-6) 支援体制きっちり

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2005年から「四賀むらづくり株式会社」代表取締役、金井保志さん=長野県松本市(緑川真美さん撮影)  天童荒太さん(以下天童) 岡崎さんは、最初に入園したとき、不安はありませんでしたか。

 岡崎英生さん(以下岡崎) 全くなかったです。自宅の近所の菜園で野菜作りの経験もありましたし、有機農法の講習会など、支援体制がきっちりしている。むしろ、星はきれいだし、本当にいいものを作ってくれたという気持ちです。ガルテナー同士はもちろん、村の人とも交流できますし。会社とは全く違う人間関係ができる。趣味がなくて困っている人は、ぜひここに来たらいい。興味がどんどん広がっていくんです。快感のオクターブが広がる。

 天童 感覚が敏感になる。

 岡崎 まさにそう。鳥のさえずり、風の薫り…。

 金井保志さん(以下金井) 何十年もここに暮らしている私たちですら、朝起きてさわやかだと思うことがありますからね。

 天童 逆に、都会では鈍感にならないと暮らせない状態ですからね。クラインガルテンを続けていく上で、今後の課題は何かありますか。

 金井 獣害ですね。山から降りてくるシカやイノシシがすごく増えた。山が荒れているからです。昔は木は貴重な燃料ですから、落ちている枯れ枝一本拾っただけでも泥棒呼ばわりされた。でも、石油によって生活が変わって、森林資源の利用が全くなくなってしまった。あとは、温暖化。シカが1年に2回発情するようになってしまって、どんどん増える。今や、人間がオリの中にいるようなものですよ。じりじりとのしかかってくる。

 天童 自然は生きている資源。活用せずに放ったらかしにしておくと、自分たちを追い込むことになってしまう。ここの課題は日本全体の危機につながるのですね。私たちは資源に関してこれまで外にばかり目を向けていましたが、それによって失おうとしているものはあまりに大きい。それに気づくためにも、クラインガルテンの役割は大きいですね。

 岡崎 クラインガルテンは学習の場。非常に基本的なことを学び直すことができる。20年、30年と続いていけば、本当にこの国は変わることができるかもしれませんね。(構成:塩塚夢/撮影:フォトグラファー 緑川真実(まなみ)/SANKEI EXPRESS

 ■おかざき・ひでお 1943年、山形県生まれ。早稲田大学卒。出版社の編集者を経て、フリーのライターとして週刊誌などで活躍。2013年、四賀クラインガルテンでの1年間をつづった『畑のおうち』を刊行。その他の著書に『劇画狂時代-「ヤングコミック」の神話』など。

 ■かない・やすし 1946年、長野県四賀村生まれ。四賀村役場を経て、2005年から「四賀むらづくり株式会社」代表取締役。

 ■畑のおうち 岡崎英生さんがガーデニング誌や新聞などに掲載していたエッセーを再構成してまとめた。宿泊用の小屋が付いた貸し農園の、土とともにある暮らしが楽しくつづられている。ちなみに表紙の女の子が、クラインガルテン大好きの小学2年生の孫娘「こうちゃん」。芸文社、1619円+税。

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