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【中塚翠涛 ココロのかたち】美味な空間 お皿の上に広がるアート
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天高く馬肥ゆる秋! 私の大好きな季節がやってきました。今年の夏は猛暑でしたが、今では朝晩の空気はひんやりとし、日中もすっかり涼しくなりました。
そして、実りの秋にはおいしい食べ物がたくさん! それに、体も心も動き出し、運動や読書をしたくなったり、新しい習い事を始めてみたり…。暑さから解放され、いろんな意欲が湧いてきます。
今月の作品は、そんな食いしん坊の私にぴったりの「美味」。
もちろん味も大切ですが、私にとっては、「食事」をともにする人との時間や空間の共有が食べることの醍醐味。うつわそのものや、盛り付け、プレゼンテーションなど視覚的な楽しみも重要です。
素敵なうつわに美しく盛り付けられたお料理から、作品のインスピレーションを得ることもあります。白いお皿の上に水墨画のように垂らしたソースのにじみや、川の字に並べられた食材の「間」、わざとお皿からはみ出したアスパラガスの穂先など、見ているだけでわくわく、ドキドキしてきます。
旅やお仕事で海外に行くと、プレゼンテーションが話題のレストランを調べて、訪ねることがあります。最近では、日本人シェフが活躍されているパリのフレンチレストラン。南仏の太陽をいっぱい浴びたお野菜と新鮮な魚介のお料理も最高でした。
北欧では、有名なデンマーク・コペンハーゲンの「Noma(ノーマ)」で修業された方々のお店を巡りました。その中で印象に残っているのは、視覚と味覚のギャップによるサプライズです。
始まりは、お料理の名前が一つも書かれていないメニュー。余白をぜいたくに使った斬新なアプローチに期待が高まります。
衝撃的だったのは、グリーンのソースをまとった三角の山。その山を割ると…中から飛び出してきたのは、真っ赤なイチゴ! 色彩からは想像できない味のハーモニーは、言葉では伝えられません。
一枚のお皿の上に表現される世界は、まさにアートです。
食べてばかりのお話になってしまいました(笑)。そうです、今は、芸術の秋! 次回は大好きな美術館のお話にしようかな?(書家 中塚翠涛(なかつか・すいとう)/SANKEI EXPRESS)