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半世紀ぶり「日本の翼」復活 三菱航空機、MRJ完成機を初公開

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半世紀ぶり「日本の翼」復活 三菱航空機、MRJ完成機を初公開

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初めてその姿を見せた国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」の飛行試験用機体=2014年10月18日、愛知県西春日井郡豊山町(甘利慈撮影)  国産旅客機としては半世紀ぶり、国産ジェット旅客機としてはわが国初となる「MRJ」(三菱リージョナルジェット)が、ついにベールを脱いだ。三菱航空機(名古屋市)は18日、完成した飛行試験用の機体を愛知県豊山町で報道陣に初公開。親会社の三菱重工の大宮英明会長は式典で、「国産旅客機の復活は日本の夢だった。ようやく夢から現実のものとなった」と述べた。来春に初飛行を行い、2017年の初号機納入を目指す。優れた燃費性能を武器にすでに約400機の受注を獲得しているが、開発計画はこれまで3度も延期されており、まだまだ楽観は許されない。

 「ものづくりの英知の結晶」

 青空に航空機が飛び交う愛知県営名古屋空港に隣接する三菱重工業の小牧南工場。午後2時すぎに工場内の専用格納庫の扉が開くと、白地に赤黒金3色のラインが入った機体が現れた。戦後初のプロペラ旅客機「YS11」から半世紀ぶりとなる国産機だ。

 試験機は全長約35メートル、全幅約30メートル、座席は約90席。最新鋭エンジンを搭載し、同クラスの従来機に比べ20%程度の低燃費を実現した。大宮会長は「ものづくりの英知の結晶。世界に誇れるメード・イン・ジャパンの製品だ」と胸を張った。

 今後、エンジンや操縦機器の作動などを細かくチェックし安全検査を実施。来年4~6月に名古屋空港を飛び立つ予定だ。

 当初計画では11年に初飛行を行い、13年には初号機が全日本空輸に納入されているはずだった。主翼の材料変更や検査不備などで3度延長された計画がこれ以上遅れれば、市場の信頼を失いかねない。

 現在の受注数は計407機。価格は1機40億円強とされ、採算ラインの400機に手は届いた。ただ、このうち4割程度は購入のキャンセルや保留が可能な「オプション契約」。計画がさらに遅れると、キャンセルにとどまらず、納入先の運航計画などに支障が出て損害賠償を請求される恐れもある。

 立ちはだかる2強

 今後20年間で5000機規模の需要が見込まれる有望な小型機市場だが、老舗のカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルの2強が立ちはだかる。エンブラエルの次世代機「E2」はすでに600機近くを受注している。

 ロシアや中国も小型機の開発に取り組んでおり、「グローバルな覇権争いが一段と激化する」(国内航空業界関係者)。勝ち残るには、高い性能にとどまらず、一段のコスト削減が重要になるほか、「座席数の異なるモデルなどラインアップの充実も必要」(大宮英明会長)だ。受注できていない欧州市場の開拓も急がれる。

 「安全に飛べると証明することで顧客の信頼を高められる。これからが本番だ」。三菱重工の石川彰彦MRJ推進室長は来春の離陸に向け気を引き締めた。(SANKEI EXPRESS

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