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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(9-2) 「人のため」が「自分のため」になっていく

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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(9-2) 「人のため」が「自分のため」になっていく

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NPO法人「すぎとSOHOクラブ」で小川清一さん(奥右)、豊島亮介さん(奥左)と語らう天童荒太(てんどう・あらた)さん(左端)。「すぎと~」の活動は起業家支援からまちづくり、子育て支援に里山再生と多岐にわたる=2014年11月4日、埼玉県北葛飾郡杉戸町(塩塚夢撮影)  ≪「すぎとSOHOクラブ」≫

 《杉戸町で起業支援やまちづくりなど、幅広い活動を行ってきたNPO法人「すぎとSOHOクラブ」。小川清一理事長と豊島亮介副理事長が迎えてくれた》

 天童荒太さん(以下天童) もともと小川さんが3・11の震災直後に友好都市だった富岡町の支援に行ったのが、今回の訓練につながるきっかけとなったわけですね。

 豊島亮介さん(以下豊島) 道路も規制がかかって車両が入れない中で、小川は杉戸町長に手紙を書いてもらったんですよ。「こいつら炊き出しにいくから通してやってくれ」と。当時、富岡町民は川内村に避難していたんですが、そのうち避難区域が拡大して、川内村民も避難しなければならなくなった。みなさん郡山市に向かうことになったんですが、移動手段がない。そこで、富岡町の町長が、うちの町長に電話かけてきて、どうにかしてほしいと。町長が号令かけて、7台のバスで郡山へと運んで、首都圏にも避難したい人は来てくださいと。約200人受け入れることになった。とはいえ公共施設が足りないので、隣の幸手市、宮代町に声をかけて。

 いざという時に役に立つ

 天童 余震や放射能の問題などどんなリスクがあるか、また、本当に助けになるかどうかも未知数のなか、ともかくぱっと行動できてしまうところがすごいですよね。

 小川清一さん(以下小川) 杉戸町は江戸川・古利根川の流域にありますが、もともと「川」を通じて、いろんな自治体と交流があった。その中に新潟県山古志村(現長岡市)もいて中越地震のときの困った状況を学んでいたから。

 豊島 あっちで困ってるときこっちで助けるのって大事だよね、という広域的共助みたいなことを、山古志村とのつながりで学びましたね。災害のニュースを見て大変だなと思っても、住んでいる人の顔までは思い浮かばない。でも、知り合いとかがいると、顔が思い浮かぶ。

 小川 震災が起きたと聞いて、きっと備蓄品じゃなくて、生鮮品や温かい物を食べたいだろうと。われわれは普段から、イベントとかで「カッパ汁」って名付けたすいとんを販売していたんですね。主食にも副菜にもなるからと。そういう積み重ねがあったから、災害時にどういう風にすればいいか分かってた。

 天童 それは、普段の暮らし、日常的な地域活動をおこなっているときから大きな災害を意識されていたということ?

 小川 そうそう。まずは自分たちが楽しんで、いざという時には役に立つものをと。

 天童 今回の「協働型災害訓練」ですが、改めて具体的にお聞かせいただけますか。

 豊島 1日目は図上訓練。そのベースとなったのが、ICSという防災言語ですね。どんな地域の人が集まっても、一発で災害対策本部が立つ。日本ではあまり標準化されていないのですが、それは困るでしょと。2日目は、炊き出しとか、自家用ヘリの離着陸訓練とか。各自治体もヘリ会社と契約しているんですが、台数が少ないのでいざというとき奪い合いになって使えない。そんな中、自家用ヘリを活用して情報収集をしようと。(取材・構成:塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

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