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挑戦し続ける次代の作品群 「第18回 岡本太郎現代芸術賞」展

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挑戦し続ける次代の作品群 「第18回 岡本太郎現代芸術賞」展

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ヨタ「金時/Kintoki」=2015年3月1日、神奈川県川崎市多摩区(原圭介撮影)  【アートクルーズ】

 「第18回 岡本太郎現代芸術賞」展が、川崎市岡本太郎美術館で開かれている。応募672点の中から入選した、過去最多の27作品を展示。今回の傾向は、絵画など平面作品の充実だという。「何だこれは!?」。生きていたら、岡本の声が聞こえてきそうなユニークな作品をいくつか紹介しよう。

 岡本太郎現代芸術賞は、時代に先駆けて挑戦を続けた岡本の精神を受け継ぐアーティストを顕彰している。常識や伝統にとらわれない、突き抜けた表現や発想を重んじる。

 作品でヤキイモ販売

 今回、岡本太郎賞に選ばれたのは木崎公隆(35)、山脇弘道(31)両氏のユニット「Yotta(ヨタ)」が出品している「金時/Kintoki」だ。

 金色に塗られた高級車の上でLEDの装飾が点滅する。後部には釜を設置。音楽にのせて低く響く「ヤキイモー、ヤキイモー」の声。そう、作品は、ヤキイモを販売する車両でもあるのだ。

 これって芸術? 疑問を持つ読者もいるかもしれないが、審査では、確かな技術力に加え、作品とヤキイモ販売を合体させて、「移動式のパブリックアート」として公道に持ち出した“発想力”と“開放性”が高く評価された。

 週3日ぐらい秋葉原や原宿などでヤキイモを売っているという山脇さん。「自分から街に出ていくことを考えた。美術館にあるから美術品としてみられ、『手を触れないでください』というルールがあるが、路上ではそうしたルールがない。変なイモ屋としてみられ、言い訳も通用しない」と、鑑賞者との距離がない関係を強調した。

 さらに「食品衛生法、消防法、道路交通法をクリアしているので、ヤキイモ屋さんを排除しない限り、ボクたちの作品も排除できない」とうれしそうだ。

 権威への批判

 岡本敏子賞に輝いた久松知子さん(24)の「レペゼン 日本の美術」のうち「日本の美術を埋葬する」は、ギュスターヴ・クールベ(1819~77年)が田舎町の埋葬に集まった名のない人々を描いた「オルナンの埋葬」(1849年)を下敷きにしている。

 岡倉天心、横山大観、平山郁夫らの故人から現在活躍中の著名な美術家、美術評論家たちの群像を描き、近寄って見ると、泥にもみえる黒い絵の具で汚れている。明治以降、形作られてきた美術界の権威を批判的に描く姿勢がみえる。

 特別賞を受賞した藤村祥馬さん(23)の「どれいちゃん号」は、いわば手作りのロボット。小学生のときに、ほかの子のランドセルまで運ばされた嫌な思い出をヒントに、自分の代わりにランドセルを運ぶ奴隷(ロボット)を作った。自転車のペダルを踏むと、どれいちゃんの足が動き、うずたかく積んだランドセルがぐるぐる回り出す。自転車の後ろには、ランドセルをふいてあげる装置までついている。

 ほかにも、森の木々の中からオオカミやフクロウの大きな目が見つめている佐野友紀さん(27)の大作「アウラの逆襲」(特別賞)、現代に対する空想や妄想を俯瞰(ふかん)図にした澤井昌平さん(26)の「風景/Landscape」(入選)など、たっぷり楽しめる作品が並んでいる。(原圭介、写真も/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「第18回 岡本太郎現代芸術賞」展 4月12日まで、川崎市岡本太郎美術館(川崎市多摩区枡形7の1の5)。一般600円。月曜休館。(電)044・900・9898。

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