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香港長官選 民主派の排除「NO」 立法会、制度改革案を否決
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6月18日、香港の立法会で次期行政長官選挙の制度改革案が否決され、記者会見する民主派議員たち=2015年、中国・香港(AP) 香港の公共放送RTHK(電子版)によると、香港の立法会(議会)は18日、香港政府が提出していた2017年の行政長官選挙に関する制度改革案を否決した。
中国側の決定を受けた政府案は長官選で初めて有権者1人に1票の投票権を与える一方で、事実上、民主派候補を排除する制度で、「ニセの普通選挙」だとする民主派議員が反対。可決に必要な3分の2以上の賛成が得られなかった。
中国外務省の陸慷報道官は18日、「われわれが目にしたくないものだ」と述べて、否決への失望感を表明した。
だが、否決によって次期長官選も現行の選挙委員会(1200人)による間接選挙が続く見通し。業界団体の代表で構成される同委は親中派が大半で、民主派候補の当選は難しい。
立法会(定数70)の採決の結果は賛成8票、反対28票だった。民主派議員27人の全員に加え、親中派1人が反対に回ったとみられる。可決は難しいとみた親中派議員の多くが採決前に退場した。改革案は17日に審議が始まっていた。
立法会の近くでは親中派と民主派の市民ら数百人が連日集会を開き、ののしり合う場面もあったが、大きな混乱はなかった。今回の採決では、一部の急進民主派らが議場乱入などの騒ぎを起こす恐れがあり、警察は立法会の内外に警官を配置して警戒に当たった。
選挙制度をめぐっては昨年9~12月、民主派デモ隊が街頭に座り込むなどして占拠活動を展開したが、政府側は譲歩しなかった。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)
≪メンツ失った中国、圧力強める恐れ≫
親中派の香港政府が中国共産党政権の方針に基づき、立法会(議会、定数70)に提出した次期行政長官の選挙制度改革案が否決されたことで、共産党政権側と香港民主派の亀裂は一段と広がった。昨年9~12月の大規模な街頭占拠デモに続き、香港社会でも親中派と民主派の対立が深まった形だ。ただ、改革案が可決されても否決されても、政権側が認めた人物以外は事実上、当選できない制度に代わりはなく、民主派は厳しい立場に追い込まれている。
18日の採決では、当初から改革案に反対を表明していた民主派議員27人に加えて、親中派からも1票の反対票が投じられ、否決された。昨年6月に共産党政権は、初の「一国二制度白書」を公表し、中国が全面的統治権を持つとして圧力をかけ、さらに選挙制度改革でも強硬姿勢をエスカレート。これに民主派のみならず親中派の一部も反発を感じ始めたようだ。
中国版のツイッター「微博(ウェイボ)」では、「全国人民代表大会(全人代)常務委員会の決定が初めて地方議会(香港立法会)によって否決された歴史的な1日だ」といった書き込みがみられた。
改革案は共産党政権の方針の下、全人代常務委による昨年8月31日の決定が下敷きになっており、中国側は“メンツ”を失った形だ。採決後に記者会見した現職の梁振英長官(60)は、「約500万人の香港の有権者は1人1票の投票権を行使できなくなり、失望した」などと述べた。
しかし、実際には親中派が中心の1200人の選挙委員会による現行の選出方法が維持される。梁氏再選の可能性も出てきた。その上、1997年の香港返還時に英国と取り決めた将来の普通選挙導入の公約について、「中国側の提案を香港自らが拒絶して実現不可能になった」との理屈により、履行しなくても正当化できる余地が出てきた。
今後、共産党政権は香港で民主派の台頭をどう押さえ込むかに関心を移すとみられる。香港問題に詳しい立教大学の倉田徹准教授は、「来年末の立法会議員選がカギになる」とみる。定数70のうち35議席が地区代表枠で、有権者が1人1票で選ぶ方式。この枠に限れば、現在も民主派議員が過半数の18議席を占める。
共産党政権側は立法会選に向け、民主派勢力の拡大を抑えるべく、候補者や民主派寄りのメディアへの圧力を強める懸念がある。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)