SankeiBiz for mobile

【ギリシャ危機】きょう国民投票 世論は拮抗 

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

【ギリシャ危機】きょう国民投票 世論は拮抗 

更新

EU側が求める財政再建策に賛成する集会=2015年7月3日、ギリシャ・首都アテネ(ロイター)  財政危機にあえぐギリシャの将来を決める国民投票が5日、行われる。金融支援の条件として欧州連合(EU)などが求める財政再建策への賛否を問う。ギリシャがEU案を拒否すれば、欧州の共通通貨ユーロ圏離脱、EU脱退の恐れがあり、世界経済の波乱は必至だ。最新の世論調査でも、賛成と反対がほぼ拮抗(きっこう)しており、世論を二分したまま、国家の命運を左右する投票が行われることになり、重大局面を迎えたギリシャを世界が注視している。

 チプラス首相は3日夕、アテネ中心部の集会で「欧州の脅迫にオヒ(ギリシャ語でノーの意味)を」と述べ、一層の緊縮財政を求めるEU案に反対票を投じるよう訴えた。さらに「正義はわれわれにあり、オヒはギリシャの尊厳と欧州を守る」と訴えると、参加者は「オヒ」の連呼で応えた。

 チプラス首相はEU側の再建策が年金改革などで国民に負担を強いるとして拒否。国民投票で反対多数を得て、世論を後ろ盾にEU側に譲歩を迫る意向だが、協議難航は確実。

 ギリシャは国際通貨基金(IMF)からの融資が返済できず、事実上のデフォルト(債務不履行)状態。EUの支援がなければ国庫は底を突き、年金や公務員給与の支払いが滞るほか、銀行が連鎖破綻する恐れもある。

 再建策がまとまらなければEUからの支援が再開されず、ギリシャが財政破綻してユーロ圏やEUからの離脱に追い込まれるという最悪のシナリオが予想される。

 世論調査会社、アルコは3日、賛成が41.7%と、数日前まで優勢だった反対を逆転して0.6ポイントリードしたと発表した。ただ、調査では「まだ決めていない」との回答が10.7%に上っており、これらの人々が結果を左右することになりそうだ。(内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ≪東京株 2万円割れか最高値更新か≫

 財政破綻の瀬戸際にあるギリシャが5日に実施する国民投票の結果次第では、週明けに主要市場で最初に取引が始まる東京市場の株価や円相場が影響を受けそうだ。欧州連合(EU)の財政再建策が否決された場合には、円高株安が進むとみられる。ただ、ギリシャ以外の国に財政危機が波及する恐れは少なく、市場の混乱は一時的にとどまるとの見方が強い。

 「ユーロ離脱」が左右

 再建策への反対が多数となり否決されれば、ギリシャがユーロ圏からの離脱に追い込まれる懸念が出てくる。「市場ではリスク回避の雰囲気が広がる」(FPG証券の深谷幸司代表取締役)。信認が揺らいでユーロが売られ、安全資産とされる円が買い進まれ、大幅な円高になるとみる関係者は多い。

 円高を受け、SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、6日の東京市場で日経平均株価が「一時的に2万円の大台を割り込む恐れがある」と予測する。

 直ちに支援打ち切りとはならず、EU首脳らが事態を収拾するためのメッセージを発する選択肢もある。ギリシャがユーロを離脱せず再交渉となれば、円高株安は一時的となりそうだ。岩下氏は「7月の中盤までには混乱は収束に向かうのではないか」とみる。

 再建策が賛成多数で可決された場合は、ギリシャへの支援が再開されるとの期待から、株価がITバブル期の高値を上回り約18年半ぶりの水準となった、6月24日のことしの最高値2万0868円を更新する展開も想定される。ユーロへの信認が維持され、円は売られる方向だ。

 JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は「欧州中央銀行(ECB)が周辺国に大量の資金供給を行える仕組みが整っており、危機波及は食い止められる」と指摘する。「投票結果が再建策に対しイエスでもノーでも、市場への影響は短期にとどまる」との冷静な見方だ。

 サムライ債で損失も

 ギリシャが円建てで発行した債券(サムライ債)にも注目が集まる。大和証券の藤岡宏明シニアクレジットアナリストによると、今月14日に償還期限を迎える債券の残高は約116億円ある。

 ギリシャが返済できなければ、大手格付け会社からデフォルト(債務不履行)と認定される公算が大きく、購入者は損失を被る懸念がある。(SANKEI EXPRESS

ランキング