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【新国立競技場】「白紙」 「見直しは当然」 選手ら厳しく批判

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【新国立競技場】「白紙」 「見直しは当然」 選手ら厳しく批判

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2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設予定地=2015年7月17日、東京都新宿区(共同通信社ヘリから撮影)  2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画が見直されることについて、元五輪選手やラグビー関係者らからは17日、「見直しは当然」との声が上がり、当初計画に厳しい意見が相次いだ。

 「建設資金が莫大で、見積もりもずさん。東日本大震災からの復興などほかに優先すべき課題がある。今の日本社会をかんがみると派手なものを造る必要はない」。こう憤るのはラグビー元日本代表の平尾剛(つよし)さん(40)。

 現行計画を推し進める理由として「ラグビーワールドカップに間に合わせるため」と言われると、心中穏やかではいられなかったという。

 元競泳選手でシドニー五輪銅メダリストの田中雅美さん(36)は「外観だけでなく、選手と観客の一体感など内側に目を向け、その場に立つことが誇りに思える競技場を造ってほしい」と話した。「計画見直しは当然」と話すのは、サッカーの元日本代表でメキシコ五輪銅メダリストの釜本邦茂さん(71)。「当初の予算から金額が上がりすぎだ」と批判し、「早く決めて早く工事にかからないといけない。こんなことをしていたら間に合わなくなってしまう」と危機感をあらわにした。

 計画に反対を表明していた元陸上選手の為末大(ためすえ・だい)さん(37)は17日、オフィシャルサイトで「再検討されることはうれしい」と評価。「聖域であることをやめ、毎日国民に使われるすべての人にひらかれた国立競技場を」「なるべく観客が近い位置で選手の息づかいを感じられる形を目指してほしい」とつづった。

 ≪抗議電話殺到 JSCの事務局関係者「正直に言って涙が出る」≫

 迷走を続けた新国立競技場の建設計画が、首相の一声で振り出しに戻ったが、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)には巨費投入に反対する抗議の電話が1週間で数百件も殺到していた。財源のめどが立たないまま計画を進めてきた文部科学省は重い空気に包まれた。

 都内のJSCの事務局では、首相が白紙撤回を表明した様子を報じる夕方のテレビ中継に職員がくぎ付けになったという。計画に関わってきた関係者は「正直に言って涙が出る。ここに至るまでにも税金を使っている。(現計画を)前に進められなかったことが申し訳なく情けない」とつぶやいた。

 事務局には抗議の電話が頻繁にかかる。関係者はコストの検証が甘かったことが混乱を招いたと認め「(抗議電話で)首相の判断まで仰がなければいけなくなったのは誰のせいだ、と厳しい指摘もあった。道義的にまた同じプロジェクトに加わることは許されないと思っている」と責任の重さを口にした。

 文科省の幹部は、計画見直しをめぐる一連の混乱や2019年ラグビー・ワールドカップ日本大会の会場変更により、国際的な信用を失いかねないとして「JSCと、所管する文科省の責任は免れない」とつぶやいた。

 東京都の負担をめぐり、文科省を批判してきた舛添(ますぞえ)要一知事は「政府は6月29日に総工費2520億円、完成時期も決定した。これを決める前に(見直しを)できなかったのか」などと強い口調で批判。ただ、首相の白紙撤回表明後には「国からよく説明を聞いた上で、対応を検討していく」などと淡々としたコメントを発表した。

 五輪の準備を担当している都の幹部らには「何でいまさら…」と困惑が広がった。ある幹部は「国が決めることなので、できる限りの協力はしたい」としつつも「これまで時間はたくさんあったのに」とうんざりした様子だった。(SANKEI EXPRESS

 ≪ザハ氏事務所が反論≫

 新国立競技場の建設計画見直し問題で、デザインを手掛けたザハ・ハディド氏が代表を務める英国の建築事務所の担当役員、ジム・ヘベリン氏は17日、競技場の工費増について「デザインが原因ではない」と指摘、「東京における建設工事費の急騰が背景にある」とする声明を発表した。

 ヘベリン氏は「デザインは標準的な建築資材を使っている」と強調、「日本の建設会社の能力で十分に対応可能な上、JSCが設定した予算に適合する」と述べた。新競技場をめぐっては建設工事費の急騰に加え「完成までの時間が限られているという背景」が問題を難しくしていると説明した。(共同/SANKEI EXPRESS

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