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海外情勢
「外国ブランドのタダ乗り」に文句が出始めたとき…クールジャパン成功?
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COSMIT 2010年夏、経済産業省にクールジャパンプロジェクトが立ち上がった当時、野党の国会議員数人とクールジャパンについて話すと、「えっ、何それ?聞いたことない。民主党の政策なんか、すぐ潰れるよ」という意見が聞かれた。
それらの反応をみて、民主党政権が倒れれば自然消滅するプロジェクトなのか、とぼくは理解した。だいたい「サブカルチャーを政府が後押ししてどうなの?」という的外れの批判も外野から多かった。しかし自民党政権になったら重要な政策になっている。
日本文化の認知度と理解度を高めることが商品の売り上げに繋がり、日本に出かける外国人観光客も増え、それがまた日本のファンを海外で拡大する循環を作るという狙いだ。例えば和食が注目株になるのは、そのシナリオと市場規模に説得性があるからだ。来年、ミラノで開催されるEXPO2015は食がテーマなので、日本政府もここぞと力を入れる。
ただ、日本の経済が上向くためのプロジェクトであることが、あまりに透けて見えすぎると海外の人もシラケル。そんな目的がどこにあるのか皆が知らなくなって、日本が地理的にも文化的にもハブ的機能を果たせるようになった時が成功ではないか。
そこで思うことがある。その当初の目的を忘れさせるほどにブランド力をつけた例がイタリアにある。「ミラノサローネ」のことだ。
ミラノサローネは国際家具見本市(正式名はSalone del Mobile Milano)で毎年4月にミラノ郊外の会場で開催される。平日はビジネス関係者しか入場できない。国内外の1700社以上の企業が出展している。業界以外の人は「ああ、サローネってインテリアの人たちの行くところね(自分には関係ない)」というのが、ずっと昔の反応だった。
しかし、この10数年はミラノ市内で同時期に開催される膨大な数の各種展示やイベント「フオーリ・サローネ」(サローネの外)と呼ばれるカテゴリーが注目されてきた。そのためサローネとフオーリを一括して「サローネに行く」という表現が普及してきた。インテリア関係の出版社が上手く仕掛けた成功例である。今年も4月8日から13日までの6日間開催された。
このフオーリはインテリア業界だけのイベントではなく、自動車や家電などの企業も参加しデザインウイークとしての地位を築いたのだ。人が集まる仕掛けができると、自動的にアイデアが繁殖していく。色々な国のデザイン振興機関も自国のデザインを世界にアピールする場に使う。今年はトリエンナーレ美術館で韓国と香港がプロモートしていた。
訪れる人もデザインのトレンドを見るために「サローネに来る」から、業界は幅広い。もともとこのサローネが家具の見本市を指すことすら知らない人たちもミラノにはるばるやってくる。
確かに普段は内部を覗けない建物の中庭などで開催されているフオーリの展示は、街の文脈の読み込みの面白さと相まってワクワク感がある。意外なインスタレーションに意表を突かれる楽しさもある。が、「これだけの投資をして、本当に経済的な見返りを得ているのだろうか」という疑問が各参加企業にないわけではなかった。商売にならない訪問者にただ酒を飲まれている、というわけだ
よってインテリア業界の企業はビジネスの打率の高さから、この2-3年、再び見本市の会場の展示に力を入れるようになってきた。一方、サローネの第1の目的はイタリア家具製品の海外輸出の増加にあるのだから、サローネのブランドが高まるのは良いが、そのブランドを利用した他者が表に出過ぎると「何のために自分たちはやっているのか?」という内部批判が生まれる。
よって国際家具見本市を主催するコズミットも会場に人を呼び戻すべく、企画展(今年であれば世界的に評価の高い複数の建築家の自邸をテーマにした展示)を会場内で行い魅力ある場所に変貌させる努力をしている。
会場にはサテリテという若手クリエイター登竜門の場もある。多くはプロトタイプを発表し、それを商品として作ってくれるメーカーを求めている。世界中から650人が参加する。メーカーも優秀なクリエイターを探している。作品のいくつかは市内にあるデパートでも展示されることになっている。
こうしてビジネスへの道筋がきっちりとしてきた結果、構成がしっかりとした見応えのある展示が増えた。フオーリに対して再び優勢に転じてきた。今年の入場者は160か国から35万人以上と昨年比で13%も増加した。これで主催者はほくそ笑んでいるに違いない。
クールジャパンも、「何で俺たちが一生懸命用意したインフラが外国のブランドにタダで利用されるのか?」との文句が内部から出始めたら成功なのだろう。