日本成人病(生活習慣病)学会で特別講演する春日雅人・国立国際医療研究センター総長。父親の食生活が子供の生活習慣病に影響することを報告した=東京都千代田区【拡大】
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と関係の深い生活習慣病は、遺伝的な因子もさることながら、主に食べ過ぎ・運動不足といった本人の後天的な環境因子(生活習慣)が引き金になる。だが、父親が乱れた食生活をしていると、生まれた子供にも食生活などの“細胞の記憶”が伝わり、生活習慣病を発症しやすくなるとする論文が最近、海外で相次ぎ発表されている。専門家は「父親の食生活が将来の子供の健康に影響を与える可能性がある」と話している。(山本雅人)
動物実験で報告
論文に注目するのは、国立国際医療研究センター総長の春日雅人氏。糖尿病の研究者でインスリンの作用メカニズムを世界に先駆けて解明、欧州糖尿病学会のクロード・ベルナール賞を日本人でただ一人受賞した経歴を持つ。
目を留めた研究の一つが2014年に米科学アカデミー紀要に掲載された中国人らの研究グループによる論文「父親による世代を超えた糖尿病の誘発」だという。
それによると、離乳後のマウスの雄を、通常の食事の群と、メタボと同じような状態になる高脂肪の食事の群に分け飼育。さらに高脂肪食群には軽度の糖尿病状態になる薬を途中で追加投与し、それぞれの群を生後16週間まで育てた。