「これまでの長い経験から言えることは、商品系列のなかで日本の取引企業数は多いし、扱い商品数も多い。つまり日本の存在感は大きい。ざっとみて20%はある。でも売り上げベースにすると5%しかない。ヨーロッパ企業の購買セクションにとって、日本製品の扱いはちょっと頭が痛いテーマだ」
ジル・マッセさんの言葉だ。彼はデザイン商品のオンライン通販、Wallpaperstoreのプロジェクトマネージャーである。その前はミラノの大手デパート、リナシェンテのデザインマーケットのバイヤーだった。
これを日本サイドに翻訳すると、「ヨーロッパのあの店で置かれています!」との勢いのあるセリフと、「あれで売れているの?」という冷ややかなコメントにある乖離を確認することになる。
かつて自動車や家電製品がヨーロッパにおける日本の存在感の象徴であった。自動車はさておき、日本メーカーの家電製品が店頭から姿を消してきたのは、この10年程度で「言うまでもない事実」になっている。
この期間で逆に浮上してきたのが、大資本や大量生産とは縁の遠い領域だ。寿司や和食などである。あるいは小さな企業のなかで生まれる、サイズの小さい日常生活で使用される家具や雑貨である。ただ、この両者は同じ地平に立っていない。
寿司や和食は日本の人が直接絡む間もなく、ローカルや中国系の力でビジネスが発展してきた。ナンチャッテ寿司とも称すべきローカライズ商品が市場拡大の要を担ってきた。しかし雑貨の世界は違う。「日本の伝統的な技術」「日本らしい優しいライン」「無駄を省いたミニマリズムなデザイン」をキャッチフレーズにビジネスを進めている。
冒頭のマッセさんの指す「頭痛のタネ」は、後者の領域を対象にしている。