このような流れの中で保護主義的な政策が蔓延(まんえん)するようになることが懸念される。保護主義的政策で最も大きな被害を受けるのは、グローバル化に反対の票を投じてきた人たちとなりかねない。だからこそ、人々の不満や格差が何によって起きるのか、冷静に分析することが必要だ。そもそも先進国でみられる格差の拡大が何によって起きているのか。これは経済学の世界でも長い間論争が続いている点であるのだ。
≪物と人やカネは同列ではない≫
先進国では確かに所得水準などで格差が広がっている。ただその要因を分析してみると、グローバル化というよりは、技術革新による影響の方が大きいという見方をする人が多い。情報技術の利用が拡大し、ロボットが工場の現場に入っていくことで、労働者の雇用機会は狭まっていく。
グローバル化によって海外の低賃金労働者に職を奪われているように感じている労働者が多いようだが、実は機械や技術に職を奪われているケースの方が多いのだ。グローバル化が諸悪の根源であると思い込みをしないで、格差の背後にある要因を冷静に分析する必要がある。
グローバル化への反感には、もう一つ大きな誤解がある。それはグローバル化とは何かという問題に関わる。単純に考えれば、国境を越えて人・物・カネ・企業などが動くことがグローバル化の基本だ。ただ、物が国境を越えて動くことと、人やカネが動くことを同列に理解することはできない。