黒柳徹子著『トットひとり』(新潮社、1500円+税)【拡大】
■ぜいたくな「おすそわけ」
人生の折々に、書きたいこと、書くべきテーマ、書かなければ忘却のかなたに沈んでしまうことを文章につづり、それを読者に提示できる書き手の、なんと幸せなことか。
50歳を前にして、戦中戦後の少女時代の体験をつづった『窓際のトットちゃん』を記し、その後日本のテレビ界の黎明(れいめい)期を描いた『トットチャンネル』を出版。今また傘寿を超えて、戦後の芸能史に刻まれるべき「自分と同じ匂いがする仲間」の生き方と別れ方を鮮やかに切り取った。
一つ一つのエピソードは、読者にとっては黒柳徹子という希代のエンターテイナーからの、ぜいたくな「おすそわけ」だ。
森繁久弥、向田邦子、沢村貞子、渥美清、井上ひさし、つかこうへい、高橋昌也、杉浦直樹、山岡久乃、賀原夏子、森光子-。黒柳は誰の懐にもスッと忍び込み、かわいがられ、時にその人の本質をむき身にする。
森繁88歳の時、「徹子の部屋」の収録中に黒柳は声を張り上げた。「森繁さん、ちゃんとやって頂かないと困るんです。森繁久弥という俳優が、どんなに魅力的で、ステキな方か、という事を知って頂きたいのに(後略)」