【書評】『トットひとり』黒柳徹子著 (2/2ページ)

2015.7.19 11:57

黒柳徹子著『トットひとり』(新潮社、1500円+税)

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 すると森繁は突然居住まいを正して、萩原朔太郎の詩を朗々と語り始める。

 連れ合いを亡くした沢村貞子は、87歳で『老いの道ずれ』という著書を出版した直後、「徹子の部屋」でこう語った。「人間て、一生懸命やると後悔しないものよ。だって、出来るだけの事、やったもの。(中略)これで、さらりと、おしまい!」

 その帰路、運転手にはこうつぶやいた。「ああ、これで全部終わった。二週間も食べなければ、死ねるかね?」

 黒柳は、そんな珠玉の人生を見届けた者の使命として、こうつづる。「今味わっているような寂寥感(せきりょうかん)を身をもって知っておいた方が、人生の様々なことを理解し判断でき(中略)もっといい表現ができるのかもしれない」

 軽妙な文体ながら、別れを代償に、女優として「ひとり」生ききることへの覚悟の書でもある。(新潮社・1500円+税)

 評・神山典士(ノンフィクション作家)

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