【書評】『安全という幻想 エイズ騒動から学ぶ』郡司篤晃著 (2/2ページ)

2015.9.12 10:45

(聖学院大学出版会・2000円+税)

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 96年、新任の菅直人厚相が「郡司ファイル」を発見したと大々的に発表した。メモ程度の資料だったが、大臣が患者らに謝罪し、著者は隠した張本人とみられた。

 安部教授は85年春の血液製剤注射でエイズ感染した血友病患者の管理責任で96年に逮捕された。検察は、原因ウイルスが判明し危険は明白だったと裁判で主張、日本の研究者や医師は意向に沿った証言をした。その検察は「危険は確定していなかった」とのウイルス発見者の証言を法廷に出さず隠していた。安部教授は1審で無罪となった。

 医療は常に途上技術で、リスクと効用の判断が難しい。メディアは公平ではなく、犯人の処罰や被害者救済を目的にする裁判でも真相は解明できない。真実が隠されたままでは再発は防げない。

 学会への期待、関係者の倫理などの分析とともに、「忘れる前に学ぶことが必要」との著者の言葉は重い。(聖学院大学出版会・2000円+税)

 評・田辺功(医療ジャーナリスト)

  

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