(文芸春秋・1200円+税)【拡大】
■滑稽な計画が真実を穿つ
「じいちゃんなんて死んだらよか」。老人の口からこんな台詞(せりふ)が飛び出したら-たいていは悲壮感いっぱいの重々しい展開を想像する。だがご用心を。そんな読者の良識など全力でおちょくられる。そして何度も笑わされ、時に冷や汗をかくうち、それまで見えていたものの姿が解体されていることに気づくはず。第153回芥川賞受賞作。
主人公・28歳の健斗は4年前から祖父と母の3人で暮らしている。87歳の祖父は年齢からすれば健康な部類に入るものの、なにかと心身の不調を訴え、すぐに「死にたい」と弱音を吐く。これまでは醒(さ)めた顔でスルーしてきた健斗だったが、ままならぬ再就職に加えて、重度の花粉症のせいで無力感と閉塞(へいそく)感がピークに達した頃、ふいに祖父と自らの境遇を重ね合わせて反省に至る。「言葉どおりに理解する真摯(しんし)な態度が欠けていたのでは?」-かくして過剰介護による「究極の尊厳死」計画がスタートする。