藤沢の装飾金属を専門にしている「さいとう工房」の一角。鉄が鉄を加工する現場。鉄の工匠たちは独特の哲学と技能がある。この写真は作品の一部。藤本晴美さんに紹介された(小森康仁さん撮影、松岡正剛事務所提供)【拡大】
【KEY BOOK】「金属のふしぎ」(斎藤勝裕著/サイエンス・アイ新書、ソフトバンク、1000円)
地球の元素のうちの75%は金属だ。鉄を知るにはまず金属を知りたい。地球が金属からできていること、その結晶的な性質のこと、金属には延性と展性があること、電気との相性のこと、レアメタルのことなど、いろいろおもしろい。金属のなかで鉄はダントツに文明の利器を作ってきた。生活資材から戦争兵器まで、鉄が活躍していないものはない。それが工匠たちの技能によって、橋にも鉄塔にも建物にも、また日本刀にもなる。
【KEY BOOK】「鉄の歴史と化学」(田口勇著、ポピュラーサイエンス、裳華房、1365円、在庫なし)
鉄の本といったらルートヴィヒ・ベックの『鉄の歴史』全16冊だ。日本製鉄にいた中沢護人さんがこつこつと一人で訳し、1979年の日本翻訳文化賞を受けた。一方、新日鉄にいたのが本書の田口勇さんだ。鉄鋼分析の研究者で、科学技術庁長官賞を受けた。本書は“鉄学”の基本とともに、日本人が知るべき鉄の歴史と文化に詳しい。宮崎駿の『もののけ姫』はタタラの民が重要な役割をもっていたが、本書はそのあたりにも深入りしている。