藤沢の装飾金属を専門にしている「さいとう工房」の一角。鉄が鉄を加工する現場。鉄の工匠たちは独特の哲学と技能がある。この写真は作品の一部。藤本晴美さんに紹介された(小森康仁さん撮影、松岡正剛事務所提供)【拡大】
【KEY BOOK】「驚異の工匠たち」(バーナード・ルドフスキー著/鹿島出版会、3990円)
エッフェル塔時代の鉄の芸術はアールヌーヴォーとも呼ばれたが、それは植物のフォルムに対する畏敬にもとづいていた。そもそも工匠たちはそうした「フォルムの母」を求めるものだ。ルドフスキーの本書は、かつて工匠たちが時代ごと民族風土ごとにどんな「フォルムの母」を求めてきたかを、みごとに証したものだ。土も石も木も鉄も対象になっているが、工匠たちはどんな素材に向かっても「母」を生かすのである。ルドフスキーの他の本と同様の名著。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/撮影:フォトグラファー 小森康仁/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)