ゴートクジ本楼の書棚に貼られた千社札と、弓岡勝美のコレクションを野島寿三郎らが構成したピエ・ブックスの『千社札』。千社札はうまく貼ると、どんなところも賑やかに、また色っぽくしていくものだ(小森康仁さん撮影、松岡正剛事務所提供)【拡大】
【KEY BOOK】「引札:日本広告デザインの夜明け」(田村コレクション/紫紅社文庫、1296円)
引札(引き札)は、江戸・明治・大正にかけて商店・問屋・仲買・販売元などが、商品や商売の宣伝のために作って撒いたチラシだ。そのルーツは千社札に似たものがあって、一遍上人が「南無阿弥陀仏」の札を配ったことに肖(あやか)ってもいる。江戸時代の引札は三井高利の越後屋が「現金安売り掛値なし」の文句を刷って、十里四方に撒いたのが最初。そうした引札を井原西鶴はおもしろがって、「これぞ商いの手引きなり」と見た。明治以降の引札は恵比須大黒・宝船・竜虎鳳凰・花鳥風月など、めでたい意匠をふんだんにあしらい、産物の土地の風景や千客万来のための文句を加えるようになった。日本の広告意匠の原型だ。