また、どの神経ネットワークの部位が活性化しているかによって、学習能力や集中力が変化することもわかってきた。しかしだからといって、化粧脳やショッピング脳がどこにあるかなんてことは、まだまだわからないことなのだ。
一方、われわれは何かを判断したり行動するにあたって、脳だけを使っているのではないことも見当がついてきた。アントニオ・ダマシオが先駆的な研究をしているのだが、脳の中にはソマティック・マーカーという“体マップ”がひそんでいて、脳はこの精妙なマップを通して体の各部との同時処理を試みていることも、ある程度だが見えてきた。脳は脳だけでなにもかもを処理しているわけではないらしいのだ。
脳の科学はまだまだ出揃っていない。ぼくはほぼ10年ごとに脳の最前線の本を片っ端から読むようにしてきたのだが、いまだ「そうか、これでわかった」という統合的な仮説にはお目にかかれない。しかし、それでも脳科学者たちとともに「脳を読む」ということは、つねにエキサイティングな知的体験をもたらしてくれるのである。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)