局地的豪雨による広島市の土砂災害で多数の死傷者を出した安佐南区(あさみなみく)八木では8月22日、新たに広島県立安西(やすにし)高校の野球部で活躍した3年の鳥越康太さん(17)の死亡が確認された。熱戦が続く甲子園には出場できなかったが、夏の地方大会ではチームの勝利に貢献した。「頼むから無事でいてほしい」と、捜索の行方を見守り続けた同級生の願いは、かなわなかった。
高校の棟田龍司教頭(54)らによると、鳥越さんは父親と兄、祖母の4人暮らし。中学でも野球に取り組み、高校では控えのキャッチャーで、打撃が得意な代打の切り札だった。部活では笑顔を絶やさないムードメーカー。野球部の同級生(18)は「みんなから『鳥ちゃん』と呼ばれる愛されキャラ。鳥ちゃんが打席に立つだけでチームが盛り上がった」と振り返る。練習試合では他校の監督からも「すごく感じの良い選手がいる」と褒められることもあったという。
甲子園をかけた7月の地方大会。康太さんは1回戦で代打に立つと、二塁打を放ってチームを勢いづけ、快勝に結びつけた。惜しくも2回戦で敗退したが、卒業後は「すし職人を目指して料理修業を始める」と誓っていたという。高校が夏休みに行う就職に向けた補講や、職場研修にも通い、意志が強く、自分で決めたことは最後までやり遂げる性格だった。