「20秒遅れていたら」
「あと20秒遅れていたら、妻は死んでいただろう」
8月22日までに住民20人以上の死亡が確認された広島市安佐南区(あさみなみく)で、自宅を土砂にのみ込まれながら助かった会社員、洞木薫さん(63)が(8月)20日未明の恐怖を振り返った。
「ゴー」。午前3時すぎ、激しい雨音で眠りにつけず、2階の部屋で横になっていると、裏の山から聞き慣れない音が耳に入ってきた。
「もしかしたら山が崩れるのかもしれない」。1階で寝ていた耳の悪い妻の手を引いて、階段を駆け上がった。20秒もしないうちに、大量の水や泥が台所の窓を突き破り、1階がすべて土砂の海に変わった。
「地鳴り・山鳴りがする」「腐った土のにおいがする」。土石流や地滑りの危険な前兆として、内閣府の政府公報オンラインで例示されている現象が、豪雨のさなかに被災現場の各所で生じていた。