広島市を襲った土砂災害から4日目を迎えた8月23日、生存率が著しく下がるとされる「発生から72時間」を過ぎた。現場では懸命の捜索活動が続いているが、街はまだ泥に覆われたままだ。「何か役に立ちたい」と、駆け付けたボランティアたちも被害の甚大さに言葉を失った。被災住民の多くは生活再建の見通しも立たず、不安を抱えたまま初めての週末を迎えた。
被害が大きかった安佐(あさ)南区の緑井地区。流出した泥水が積もった土砂に溝をつくり川のように流れる。近くにはがれきとなった民家。消防隊員らによる捜索で身元不明者が見つかった。
「足の部分が見えた。パジャマが似ている」。捜索していた消防隊員が、そばで見守っていた男性2人に近寄り、そう告げた。2人は無言で、親しい人の死を必死で受け入れようとしているようにも見えた。
「72時間なんて関係ない」。安佐南区八木の無職、野津竹志さん(59)は多くの行方不明者を思い、つぶやいた。自宅前の排水溝を埋めた土砂を黙々と取り除いていた。