スナップ写真、名刺入れ
「あった、アルバムや。残ってる!」
猛烈な土石流に襲われ、大きな被害が出た広島市安佐南区(あさみなみく)の八木3丁目。犠牲になった星野藤夫さん(79)の自宅跡で、泥の中から遺品を見つけた親族の一人が声を上げた。何十年も前の家族とのスナップ写真。「子供のころ、かわいがってくれたから」と長女の輝恵さん(51)が涙ぐんだ。
藤夫さんは1965年ごろに建設会社「星野組」を創業した。「とことん、お客さんの立場に」が口癖だった。輝恵さんは新たに捜し当てた父の名刺入れを眺めるうちに、何もないところから会社を興した「努力の人」の後ろ姿を思い出した。「名刺をくれた人のところに、感謝の気持ちを伝えに行きたい」と話す。
星野組は長男の保雄さん(54)が後を継いだ。藤夫さんが建てた自宅は流されてしまったが、基礎部分と車庫はしっかりと残った。「父の思いを胸に刻み、この会社を絶対に守る」と自ら重機を動かし、復旧作業に当たった。