東日本大震災から11日で3年半を迎える。東京電力福島第1原発事故で避難生活を強いられている周辺の住民は約13万人に上る。進まぬ除染作業に帰還のめどは見えず、住民らは「選択」を迫られている。
進まぬ除染作業
福島県大熊町小入野(こいりの)地区の自宅は、同居する義母(88)が植えた色とりどりの花に囲まれ、家族の笑い声が絶えなかった。周囲には先祖から受け継いだ田畑や山林があり、ずっと守り続けてきた墓もあった。
ここに、除染で出た廃棄物を保管する中間貯蔵施設ができる。悔しさ、悲しみ…。会津若松市の仮設住宅に身を寄せる根本充春(みつはる)さん(74)は、思い出が詰まる故郷が廃棄物で埋め尽くされるのを思い浮かべ、さまざまな感情を抱く。
ただ、県が8月末に表明した施設の受け入れは、冷静に受け止めた。自宅は屋根の一部が抜け落ち、雨水にさらされて無残な姿に。とても、帰れる状況にはないからだ。8月3日に一時帰宅した際に放射線量を計測すると、毎時18マイクロシーベルト。今も国が避難指示解除の最低条件とする年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト)を大幅に上回っている。