実際には壁は壊せなかったのだが、そのかわり何枚もの大小の板切れを組み合わせてプレートや看板にして、そこにメモ風のお薦め言葉を手書きすることにした。まるで山小屋の“本の道具箱”めいてきた。
隈ちゃんは天井からLANケーブルの配線を柔らかく丸めながら、いっぱいぶら下げた。ぼくは塚田有一君に頼んでシダ植物を床にいっぱい並べてもらった。これで棚は本だらけ、上はモジャモジャ、下はシダシダになった。部屋の奥まったところには、千夜千冊のゲラに赤字を入れている痕跡を再現した。題して「屋根裏ブックウェア」だ。
持ち込んだ約2000冊の本は、ぼくが面白がった本ばかりだ。ラスキン・矢内原伊作・伊東豊雄の造形本もあれば、モーパッサン・唐十郎・立川談志・井上ひさしの戯作もある。森村泰昌や杉本博司のアーティスト本にはフーリエやヘルマン・ワイルやオスカー・ベッカーの科学的美学をぶつけてある。世阿弥と柳生の兵法書と山岡鉄舟と内田樹が並んでいるのは、ここくらいだろう。本の並びは意外な対同(ついどう)をおこしたほうがいい。手にとりたくなる。