シェイクスピアを読むとは、われわれの周辺のどこにだって「世界劇場」が密かに用意されていて、そこではシェイクスピアのセリフめいた「裏切りの言葉」がいつも交わされていることに気付くことなのである。
【KEY BOOK】「ハムレット」(シェイクスピア著、福田恒存訳/新潮文庫、432円)
名セリフといえば、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」や「弱き者、汝の名は女なり」になるが、イギリス人にとっては「習慣は大事だが、守るより破ったほうがいいものもある」のほうが人生訓になっている。デンマークの王子ハムレットが、父の死はクローディアスによるものだと知るのは、亡霊となった父から教えられたからだ。なぜ亡霊が登場するのか。シェイクスピアは複式無幻能的な趣向が得意だったのだ。