【KEY BOOK】「病める舞姫(限定復刻版)」(土方巽著/白水社、4320円)
日本はむろん世界にも、こんな文芸的傑作はなく、こんな異端的な身体記憶の告白録はない。その言い回しのごくごく一部を上に紹介したけれど、その言葉はことごとく穿たれた体の細部の記憶になっていて、かつ、ピンセットで摘まれた昆虫のように知性の極みが黒光りする。もはや土方の舞踏は見ることはできないが(多少のフィルムは残っているが)、それでもしかし『病める舞姫』にはすべての土方ダンスの全身が昏倒されている。必読だ。
【KEY BOOK】「美貌の青空」(土方巽著/筑摩書房、2800円、在庫なし)
土方さんは1973年の『静かな家』を最後に踊らなくなって、少し体をまるめながら後進の身体表現指導にのみ徹していた。それからふいに57歳でこの世を去った。その翌年に遺文集として刊行されたのが『美貌の青空』だった。泣き泣き読んだ。もう、こんな人はゼッタイに出現しない。だからせめてその言葉の結像感覚を探ってほしい。驚くべき言語舞踏なのである。とてもアナーキーでネオバロックで、すこぶる東北的な病身美貌なのである。