ストーンとカズニックの告発には、もちろん偏ったところもある。けれどもこの告発がアメリカ人の手で大局細部にわたって彫琢されるかのように試みられたことには、むしろ日本人こそが耳を傾け、目を凝らしたほうがいい。
【KEY BOOK】「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史1」(オリバー・ストーン&ピーター・カズニック著、金子浩・柴田裕之・夏目大訳/早川書房、2160円)
日本人はこの1巻目「2つの世界大戦と原爆投下」をよくよく読むべきだ。ここには、アメリカがニューディールで体力回復を果たしつつあるとき、全体主義のドイツと社会主義のソ連の著しい台頭に直面した大統領チームが、日本を犠牲国に選ぶことによって一挙に世界制覇のカードを掌中にしようとしたシナリオが赤裸々に暴かれる。ストーンらはこれを「アメリカの途方もなく陰険な企み」と断定した。軍事的には原爆を落とす必要はまったくなかったのである。ソ連参戦を一日でも早く挫(くじ)くこと、ポツダム宣言の受諾以前に事態を制すること、これが狙いだった。それを凡人中の凡人トルーマンに決断させたのである。