と書きましたが、実は質問の中には「子育てで悩んでいます」というような、普遍的なものもあったりします。のびのび育てたいと思いつつも、子供が興味を持つものについ口を出してしまう…といった感じです。このような相談にも、趙治勲さんはけっしてユーモアを忘れず、説教調にもならず、読んでいて「ああ、この回答良いなあ」と、すとんと胸に落ちるような答えをされています。
また、質問の合間に収録されている「ひとりごとコラム」という、趙治勲さんの思ったことが好きに書かれているコーナーも、人となりが垣間見えて、なんとも読ませる内容です。二十年前、あのマッチを折っていた人はこんな方だったのかと、私は認識を新たにしました。
父の囲碁の相手
いっとき私は囲碁が強くなりたかったです。私の父は囲碁を打ちました。かなり強かったです。父は定年退職後、車で10分ほどの場所にある福祉センターまで、毎日のように囲碁を打ちに行っていました。その父が高齢になり、もし車の運転ができなくなったら、父の唯一の趣味とも言える囲碁の相手は誰がするのか。私がしなくては、と思ったのです。