「snake_and_bird」(2012:カンバス、アクリル・顔料280.0×411.5、ヴァンジ彫刻庭園美術館蔵)。Courtesy_of_The_Vangi_Sculpture_Garden_Museum、岡野圭さん撮影、提供写真)。(C)Hiroshi_Sugito【拡大】
実はこの両者、青木の設計した青森県立美術館で、四つに組むはずだった。その企画が東日本大震災で中止となって以来、この2人は、「あいちトリエンナーレ2013」展をはじめ、ことあるごとに一緒に意見を交わし、新たな展示空間に挑戦してきた。今回は2人のユニットというわけではないが、そこには、杉戸が建築という器について、これまで考えてきた遡行錯誤が、ふんだんに盛り込まれている。その結果、単にすぐれた建築空間に良作が並ぶというのではない、もっとはるかに複雑なかたちで、絵画と建物の両者が干渉し合うという、まるで音楽を聴いているような展覧会ができあがった。
トークで青木が指摘した通り、コルビュジエのもとで古典的な幾何学的構造を身につけた前川の建築は、至るところで黄金比が活用されている。黄金比とは古来より、調和がとれていると感じられる形態に潜む数学的な秩序のことだ。逆に言えば、黄金比で設計された建物が持つ空間は、そこになにも飾られていない時に、もっとも完璧ということになる。完璧な比率の空間なのだから、そこに絵画を並べても彫刻を置いても、「下地」の強さには変わりがない。言い換えれば、建物に負けてしまう。もしくはその力を借りてしまう。たとえそうでなくても、そのように感じられてしまう。これは、優れた建築が持つ魅力であると同時に、実は欠点でもある。