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機械的秩序を絵画がかき乱す 「杉戸洋展 天上の下地 prime and foundation」 椹木野衣 (3/5ページ)

2015.5.25 15:00

「snake_and_bird」(2012:カンバス、アクリル・顔料280.0×411.5、ヴァンジ彫刻庭園美術館蔵)。Courtesy_of_The_Vangi_Sculpture_Garden_Museum、岡野圭さん撮影、提供写真)。(C)Hiroshi_Sugito

「snake_and_bird」(2012:カンバス、アクリル・顔料280.0×411.5、ヴァンジ彫刻庭園美術館蔵)。Courtesy_of_The_Vangi_Sculpture_Garden_Museum、岡野圭さん撮影、提供写真)。(C)Hiroshi_Sugito【拡大】

  • 「untitled」2009(提供写真)。(C)Hiroshi_Sugito
  • 「イーハトーヴ」の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 主展示室の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 主展示室の展示風景=2015年5月19日(提供写真)
  • 宮城県美術館の外観=宮城県仙台市青葉区(提供写真)

 生身だからこそ生じる誤差

 他方、絵画というものは、当然のことながら、比率だけからはできていない。建築と違って、絵は、どんなに大きくても、人の身体で描かれる。決して、機械的に描かれるということがない。いや、描くことはできるかもしれないが、決して人の目を引きつけるような、いい絵にはならないだろう。私たちのからだは機械と違い、絶え間なく呼吸し、つねに左右が非対称に動き、疲れたり休んだりを繰り返す。それが生身ということだ。

 つまり、そこには、常に正しい秩序からの逸脱というものが生じている。そして、この機械的な秩序からの身体ぐるみの豊かな誤差の体感こそが、絵画にあって最大の魅力なのだ。

 見方を変えれば、杉戸にとって、前川國男の建築の内部で展示するということは、前川の作り出す、完璧だが非人間的な機械的秩序を、いかに絵画の側から魅力的にかき乱すかという、一種の冒険であったように感じられる。これは、個性豊かな建築との饗宴(きょうえん)というのとも違っている。どちらかといえば、挑戦と言ったほうが近い気さえする。

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