危機体験とシモ関係
峠を越え、大きな川にかかるどこかの橋を渡ると、それまでのことが嘘のように天気は好転しました。吹雪の中で死なずに済んだことに、ただただ私は安堵(あんど)し、助手席でぐったりしました。
今思うと、停まらなかった父が正解でした。あんなところで停車していたら、それこそ凍死、あるいは追突されていたでしょう。それにしても怖かった。今までの人生の中で、一番怖かった吹雪体験です。
で、どうしてこんなことを書いているかというと、先日部屋の整頓をしていたら、本棚の奥から林雄司(Webやぎの目)編『死ぬかと思った』が出てきたからです。この本は肉体的、精神的に「死ぬかと思った」ことで、自分自身折り合いがついている経験の投稿集です。懐かしくてつい読み直してしまいました。
それにしても、この本に収められた体験談の中に占めるシモ関係の比率たるや。人間、笑いとばせる「死ぬかと思った」事柄は、どうしても尾籠(びろう)な方面に傾いてしまうようです。(作家 乾ルカ/SANKEI EXPRESS)