初戦で骨折した安藤梢の代わりに、なでしこ快進撃を支えた白いクマは岩渕真奈(まな)に抱かれて決勝の会場を去った。決勝でチームに合流した本物の安藤は表彰式で銀メダルをかけられ、山根恵里奈に背負われて退場した=2015年7月5日、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー(岡田亮二撮影)【拡大】
以来、現地で購入した縫いぐるみに安藤のユニホームを着せてベンチ入り。いつも両腕に抱いての入場役はチーム最年少、岩渕真奈(まな、22)の役目だった。「アンチ(安藤)とともに戦っている」がチームの合言葉になり、安藤自身が皆に告げた「私をバンクーバー(決勝戦の舞台)に連れてって」がチームの目標となった。
離脱の際、岩渕は「後を頼むね」と安藤に託されたのだという。安藤の離脱で先発に返り咲いた川澄奈穂美(なほみ、29)は切れ味を取り戻し、準決勝の決勝オウンゴールを生み、安藤との約束を果たした。
決勝開始直前、ベンチにはユニホーム姿の安藤の姿があった。白いクマの縫いぐるみも共存した。チーム全員の笑顔もあった。彼女らを支えた神通力は皮肉なことに、ここで途切れてしまったのかもしれない。ホイッスルとともに、米国の猛攻が待っていた。
笑顔は消えた。