初戦で骨折した安藤梢の代わりに、なでしこ快進撃を支えた白いクマは岩渕真奈(まな)に抱かれて決勝の会場を去った。決勝でチームに合流した本物の安藤は表彰式で銀メダルをかけられ、山根恵里奈に背負われて退場した=2015年7月5日、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー(岡田亮二撮影)【拡大】
≪ベテランの涙 新世代の決意≫
岩清水梓(いわしみず・あずさ、28)の涙が止まらない。
開始早々、彼女がマークするFWロイドにハットトリックを決められた。3分、5分、16分。これで試合の行方はほぼ決まってしまった。1点目はロイドのスピードに彼女を見失い、3点目は自らのクリアミスをそのまま決められた。
前半33分に澤穂希(ほまれ、36)と交代すると、ベンチで泣き崩れた。仲間に励まされてようやく前を向くが、涙はそのままだ。体格に恵まれず、スピードがあるわけでもない岩清水のすごさは、競技場の高いところから見るとよく分かる。
敵のパスは岩清水に向けて出されているのではないかと錯覚させるポジショニングの絶妙。攻撃の起点は岩清水の縦パスにあり、窮地に体を投げ出す勇気もある。
攻のコンダクターが宮間あや(30)なら、守のそれは間違いなく岩清水だった。岩手県出身、「東北魂」を胸に、なでしこの粘り強くあきらめない守備陣を支えてきた。その自負も自信も矜恃(きょうじ)も、ロイドに蹴散らされた。