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「あっち側」に行っちゃえば? 懐深い作品集 乾ルカ (3/5ページ)

2015.7.14 15:30

函館山から見た景色。おそらくは恋人同士でいっぱいの夜に撮りに行くガッツはありませんでした…=2015年6月19日、北海道函館市(乾ルカさん撮影)

函館山から見た景色。おそらくは恋人同士でいっぱいの夜に撮りに行くガッツはありませんでした…=2015年6月19日、北海道函館市(乾ルカさん撮影)【拡大】

  • シャンプーしたてでドヤ顔の乾家の愛犬・まるが北海道の風景をご案内します=2015年7月6日、北海道札幌市(乾ルカさん撮影)
  • 「ゲイルズバーグの春を愛す」(ジャック・フィニイ著/ハヤカワ文庫、842円(税込み)、提供写真)
  • 【本の話をしよう】作家、乾ルカさん=2月15日(提供写真)

 この、極端に現実離れしていない、という雰囲気が実に良く、読み手の想像力をかきたてます。私たちの日常にも、こんなことがあるのでは、もしかしたら明日それは起こるのではという期待を呼ぶのです。

 表題作にもなっている『ゲイルズバーグの春を愛す』もそうですが、収録作品の多くで、過ぎさって二度と戻らない過去の世界が垣間見えます。そのノスタルジックなテイストも良いです。とにかく異世界としての過去のみならず、現実にはありえないだろうという要素に満ち満ちた『あちら側』に、登場人物たちは特別ななんらかの手続き-彼らが現実の外側へ行こうという意思的な画策-なしに触れます。ごく当たり前に、現実のすぐ隣、地続き的にもう一つの世界が待っているのです。押しつけがましくない自然さで。

 作品によって、そのつながりがもたらす現象は、少し怖かったり、ほのぼのとしたり、ニヤリとさせられたり、あるいは切なさに胸が震えたりと、10編の作品それぞれ魅力的な読み味があります。そして、なによりこの短編集の素晴らしいところは、現実世界へ背を向けることをいさめていない点だと思います。「現実がつらいのなら、別の世界があったっていいじゃない」「なんなら、そっちのほうへ行っちゃってもいいじゃない」、そんな印象を受けます。

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