若者はぜひ一読を
本書は紛れもなく日航機123便の悲劇を遺体の身元確認という特殊な立場から描き出した傑作ですが、私はそれに加えて、職業意識のあり方をも見事に提示していると思います。この中に出てくる身元確認に関わった方たちのほとんどは、嘔吐(おうと)し、食欲を無くし、疲れ切り、体中に死臭をしみつかせながらも、現場からけっして逃げはしません。どれほどつらくとも、これは自分の仕事、自分がここを放り出したら誰がやるのだと、強い意志をもって検視をこなしていきます。その姿は崇高で非常に美しい。自分には決してできないことだと確信しながら、それでもこんなふうに強い責任感を持って真摯(しんし)に仕事に向き合う看護師になりたかったと、初読時は思いました。いわゆる『社畜』を礼賛しているのではありません。そんな次元ではないのです。