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過去の過ちから学ぶ新しい知恵 「水と土の芸術祭2015」 椹木野衣 (2/5ページ)

2015.9.26 18:45

高橋伸行「旅地蔵-阿賀をゆくー」=2015年年5月8日(中村脩さん撮影、提供写真)

高橋伸行「旅地蔵-阿賀をゆくー」=2015年年5月8日(中村脩さん撮影、提供写真)【拡大】

  • 高橋伸行「旅地蔵-阿賀をゆくー」=2015年年5月7日(中村脩さん撮影、提供写真)
  • 市民プロジェクト「矢垂川プロジェクト_パート2」からクインビン・オフラハラ作品=2015年8月28日(中村脩さん撮影、提供写真)
  • 日比野克彦「BOAT_HOUSE_DOCK_YARD(船の家_造船所)」/清五郎潟=2015年7月26日(中村脩さん撮影、提供写真)
  • アート作品と食がコラボレーションする「潟るカフェ」。黄色いキッチンカーで、メインフィールドの4つの潟などを巡りながら(3週間ごと)、潟の食材や潟周辺地域で採れた食材を使ったメニューを土日限定(営業時間:11~15時)で提供する。建築家・金野千恵によるカフェの設えの中で、新潟の食を堪能する。また、カフェの設えは各潟によって形を変えていく移動アートとして楽しむことができる=2015年8月9日(中村脩さん撮影、提供写真)
  • 吉原悠博「培養都市_COLONY」(提供写真)

 その立脚点とはなにか。「大地の芸術祭」の舞台となる越後妻有は、山間部・豪雪地帯・過疎地区という、言ってみれば三重苦を抱える土地だった。それを北川氏は、美術を探して歩く遍路のような旅、ひときわ輝く夏の恵み、土地に根ざした住民たちとの出会いというふうに大胆に読み替え、粘り強く現地との交渉を重ね、アーティストを厳選し、開催期間中の来場者が48万人にも及ぶ一大事業に育て上げた。その後、まるで雨後の筍(たけのこ)のように全国各地で追随例が相継いだのは、この成功が大きい。芸術祭とはいえ、税金を投入した公共事業ではあることに変わりはないのだが、掛け声だけの「街おこし」とはまったく別ものの地域再生をなしとげたのだから、無理もない。

 他方、単なるあと追いのなかには、そのぶん負の側面が目につくものが出てきているのも事実だ。美術展としての質の維持は、その最大の問題だろう。いくら公共事業と言っても、芸術にかかわることなのだ。内輪だけで盛り上がっても質が伴わなければ、けっきょくは外からの来場者に足を運ばせ続けるには至らない。いずれ衰退すれば、かつての箱もの行政と同じ、新たな負の遺産に成り下がってもおかしくない。それを避けるためにも、その土地ごとに根ざす、しっかりした理念がどうしても必要なのだ。「大地の芸術祭」は、だからこそ成功していることを忘れてはならない。

4つの「潟」を主な会場に

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