中でもニューヨークの自然史博物館で撮影した「オリンピック雨林」は幅4メートル以上に及び、有史以前から茂ってきた樹林や、そこに住み着いているシカが実物のようなリアルさを持って迫ってくる。
自身を世に知らしめたジオラマシリーズについて、杉本は展覧会の図録の中で、こう書いている。「時間が止められてしまったジオラマを、私のカメラでもう一度時間を止めてみる。殺された状態をもう一度殺す、というのは、もしかしたら生命の復活に繋がるのではないか」
杉本のジオラマ写真は発表された当初、生きている動植物を写したものと錯覚された。杉本はこうも踏み込む。「虚像と見抜けない程の虚像、リアリティーとは本当の嘘なのかも知れない」
しかし、翻って考えてみれば、「芸術」にとって、「ありのまま」を提示するだけでは、“美”や“真理”は伝えられない。自然界の美や真理を、リアリティーという「嘘」をたっぷり注ぎ込むことで、1枚の写真に閉じ込める。だから、その「嘘」こそが、作品を芸術たらしめているのは明らかだ。