杉本は写真家として有名になる前、米国で約10年間、骨董店を開いていた。ジャック・ゴーティエ・ダゴティ「筋肉解剖完全版」は、ニューヨークで手に入れたという。18世紀の版画工房主宰者、ダゴティによる医学書の一部を掛け軸に表装した。背中の皮を切り開かれた女性の姿は、なまめかしささえ感じさせる。
レンブラント・ファン・レイン(1606~69年)と古田織部(1543~1615年)という、ほぼ同時代の作家によるコラボレーションもある。和紙に刷られたレンブラントの版画「天使来迎図」の掛け軸の下に「織部燭台(しょくだい)」が置かれている。キリシタン大名だったとの説がある織部の燭台には十字架が描かれている。2作品は邂逅(かいこう)を喜ぶように厳かなハーモニーを奏でている。
杉本は「婦人画報」の企画で、27回にわたり著名人を招き、こうした床のしつらえを前に料理をふるまった。主人(杉本)とゲスト、そして美術品が出合い、新たな“対話”が生まれ、リレーショナル・アート(関係性の芸術)ともいうべき新しい芸術が生まれた。