多くの優れたカメラマンがそうであるように、杉本も美を発見し、写真に「定着」させる。違うのは、対象が「本物」ではないジオラマや、安っぽい装飾の劇場や、見慣れた海の風景であってもだということ。そこには鋭い審美眼つまり“目利き”が働いている。
ジオラマを撮影するうちに杉本は、化石にも興味を持った。化石を、写真と同様に時間を止められる「前写真時間記録装置」と呼ぶ。化石を集めるようになり、「石になる前の生命へと想いを馳せる、そうした私の空想の楽しみが一つ増えた」とも書く。
先人の「心の痕跡」に浸る
しからば、もう一つの展覧会に登場する数々の骨董(こっとう)とは何だろう。“精神の化石”といえないだろうか。古美術品には時代の空気、作り手の美意識だけでなく、使い手の息づかい、生活の臭いまでが“記録”されている。いうまでもなく、骨董をめでることは、先人が残した“心の痕跡”に浸る楽しみだ。