岡本は東京展について準備委員会の記録では「画家であるとかの職能を超えた超素人や超玄人としてみんなが参加し、祭りのようになるべきだ」と語っている。その発言通り、第1回東京展(75年、東京都美術館)は「方向性をもったアンデパンダン(無審査)」で行われ、1500点以上の作品を集めた。しかも絵画、彫刻にとどまらず、デザイン、演劇、音響などでも出展。寺山修司の天井桟敷や土方巽の舞踏も場外で催された。
「顔」に描かれたメッセージ
岡本は「記念撮影」を、中村は「おそれB」を出品した。今回の展覧会では2人の作品に加え、井上長三郎、山下菊二、田名網敬一、粟津潔、田島征彦、丸木位里、四谷シモンら著名作家の「第1回東京展」出品作約30点が展示されている。
中村の「おそれB」は、モデルが田中角栄とのエピソードが残る政治家や金持ちたちを手前に描く。背景に浮かび上がるのは、不信感やあきらめの表情に満ちた庶民の顔、顔、顔だ。日展を飛び出したあとの中村は、反権力、反権威の姿勢をあらわにし、水俣病など社会問題に題材をとった作品も発表した。