中国人民元のSDR(特別引き出し権)構成通貨入りを発表するIMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事。今回の決定の背景にはさまざまな意図が込められている=2015年11月30日、米国・首都ワシントン(AP)【拡大】
WSJは、中国政府がそのために、民間部門の活発な競争につながる自由な資本市場の「規律」を受け入れる必要性を強調する。先進国入りを果たす前に停滞期に陥る「中所得国のわな」に直面する中国は、開放的な市場運営による金融部門の競争力強化のため、「銀行の融資判断への政府干渉をなくすことが不可欠だ」と述べる。
「借金」踏み倒し懸念も
市場自由化へ慎重に歩みを進める半面、依然として政府統制を手放さない中国指導部の姿勢を危ぶむのが、元IMF幹部(中国担当)だったエスワー・プラサド米コーネル大教授だ。
2日のインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(NYT)への寄稿でプラサド氏は、元のSDR採用により、海外投資家が中国の金融市場で資金の出し入れを次第に増やしていくと予想する。ただ、プラサド氏は、今夏の政府による株式市場と外国為替市場への介入が投資家を混乱させ、金融市場の「ボラティリティー(変動幅)を大きくした」と指摘。SDR採用によって元の資金需要が増大し、市場が不安定化する負の側面に懸念を示した。