国際原子力機関(IAEA)本部に到着した(左から)イランのザリフ外相、天野之弥(ゆきや)IAEA事務局長、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表=2016年1月16日、オーストリア・首都ウィーン(AP)【拡大】
≪サウジに衝撃 中東覇権争い本格化≫
米欧の対イラン経済制裁解除を受けて中東では、国際的立場を強めたイランと、アラブの大国サウジアラビアとの覇権争いが本格化しそうだ。米国とサウジが協力してイランに対抗するという従来の構図が崩れたためだ。シリア和平やイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)との戦いなど、あらゆる局面にイラン・サウジの「冷戦」が影を落とすことになる。
オバマ外交転換
背景には過度の中東関与からの脱却を急ぐ米外交の転換がある。エネルギーを中東に依存する日本は、イラン、サウジ双方と独自の関係を強化する必要に迫られる。
産油大国のイランとサウジは中東の両極だ。イスラム教シーア派を国教とするペルシャ人中心のイラン。スンニ派の盟主を自任するアラブ国家サウジ。特に1979年のイラン革命後、米国とサウジは「革命の輸出」を食い止めるため協力してイラン封じを図った。
サウジにとって、その米国がイランとの対話に転じ、反対を押し切って制裁解除に踏み切った衝撃は大きい。