国際原子力機関(IAEA)本部に到着した(左から)イランのザリフ外相、天野之弥(ゆきや)IAEA事務局長、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表=2016年1月16日、オーストリア・首都ウィーン(AP)【拡大】
米国家安全保障会議(NSC)のスティーブンソン元中東北アフリカ担当部長らは最近の論文で、シェールオイルの出現で中東への原油依存から解放された米国にとって「サウジの戦略的重要性は低下」しており、むしろ「核合意を利用してイランとの関係改善」に向かうべきだとオバマ政権の立場を代弁した。
サウジには受け入れがたい論理だ。トルキ元駐米大使の側近、ジャマル・ハショコジ氏は、制裁解除を「地域の緊張を悪化させる大失敗」と指摘。今後の中東外交は「イランの覇権を食い止める」戦いになると断言した。
サウジが今月、国際社会の要請を無視してシーア派指導者、ニムル師を処刑し、イランとの断交に踏み切ったのも、イランの勢力伸長への「恐怖」が原因と指摘される。
米国との緊張緩和と制裁解除で「イランの立場が強化される恐怖」がサウジの強硬姿勢の根底にあり、今後もこうした「冷戦」が続く-。米「戦略外交研究センター」のモハセン・ミラニ上級部長はそう分析する。