記憶を辿るこの小道を行けば、少年時代の思い出がやってくる。なんてことを思わせてくれる尾道の裏道=2014年12月29日、広島県尾道市(長塚圭史さん撮影)【拡大】
塗りつぶされた姿
当時Hというお金持ちの友人がいて、彼は小道を入ったところにある、蔦が絡まる洋風の一軒家に暮らしており、両親は殆ど不在。Hは当時としてはかなり早い段階でパソコンを習得し、ゲームをしたり、ちょっとしたプログラミングなんかもやっていた。で、私もどちらかというとインドア派なので、面白がってよく遊びに行ったのだけれど、そのHのパソコン機材に埋もれた部屋の隅に、白い洋風の、いかにもアンティークなクローゼットがあった。妙なのはその表面がどういうわけか塗り直したようになっているのだ。気になって尋ねると、H曰く、そこにはかつて魔女の姿が描かれていて、それがあってはどうしても眠る事が出来なかったので、遂に塗りつぶしてもらったということだった。なるほど、確かにこんなところに魔女の姿などがあったらさぞ恐ろしいことだろう。という友人の例もあったので、私としてはマンション暮らしとはいえ、なんとか天井も壁も塗りつぶして欲しかったのだが叶う筈もない。