グーグルが米サンフランシスコ湾上で極秘に建設している巨大な4階建ての建造物。関係者以外近づけない厳重警戒ぶりで、グーグルは「人々が新技術を双方向で学べるスペースに使う」とコメントしたが、地元市民から不安な声が出ている(AP)【拡大】
その一方、カリフォルニア公共政策研究所によると、サンフランシスコの住民の23・4%は貧困層だといいます。格差は急激に拡大し、貧困層はもちろん、昔ながらの地域住民に多い中間層も街を追われることになります。
そして前述のニューヨーク・タイムズ紙のオピニオン欄の記事は「看護士、教員、アーティスト、ウエイター、バス運転手、警官、ミュージシャン、作家、おばあさんがいない街は単一文化の不毛な街だ」と訴え、こうした状況が進むことを強く批判しています。
1960年代、ヘイトアシュベリー地区から対抗文化やヒッピー文化が生まれたことで知られるサンフランシスコ。そうした文化が生んだ権威や権力を敵視しする姿勢に憧れ、この地で起業したのがアップルの故スティーブ・ジョブズらをはじめとする米IT業界の創業者たちでした。彼らの意志や思想を継承するものたちが、その精神の象徴であるサンフランシスコを画一化された普通の街に変えようとしているのです。実に皮肉なことですね。(岡田敏一)